当院は眼科診療に力を入れており他院からの紹介が多いのが特徴です。その中で最も紹介が多い眼科疾患は、白内障と緑内障ですのでそれらについてご説明いたします。白内障水晶体(レンズ)の機能は、網膜上に光の焦点を合わせることですが、その水晶体が濁った状態を白内障といい、網膜に到達する光が遮られることで視力が低下します。犬において、進行性白内障は、失明の主な原因です。 多くの白内障は、水晶体に関わる遺伝性もしくは先天性疾患の結果です。また、犬種で遺伝的に白内障になりやすい素因をもっていることが知られています。遺伝的白内障の犬は、繁殖に用いるべきではありません。一方白内障は、糖尿病や加齢、外傷、網膜疾患によっても発生しますが、遺伝性のものより多くはありません。白内障は、原因によって完全に失明する場合やそうでないことがあります。 白内障になった犬の視力は、手術により水晶体の白内障の部分を取り除き、その場所に人工眼内レンズと置きかえることにより、回復することができます。以下に白内障とその手術、そして犬における眼内レンズ移植術などに関する重要事項をのべます。 猫の白内障の特徴は、ほとんどが外傷や眼内の炎症により二次的に発生し、遺伝性は稀です。また、犬に比較して糖尿病から発生する白内障はまれです。 白内障のための術前検査全身状態を把握するために現在と過去の病歴、薬剤の投与歴などをお聞きします。その他血液検査や必要があれば尿検査やレントゲン検査も行います。次いで眼科検査を行いますが、いくつかの検査の中でも特に細隙灯顕微鏡検査(スリットランプ検査)によって角膜・水晶体などを詳しく観察し、そして眼の超音波検査、網膜の機能を見るための網膜電位検査(ERG)などを行います。その結果手術が可能かどうかを判断いたします。 白内障はどのように治療するのか?現在、進行性または急性に進行している白内障に対する唯一効果的な治療法は、白内障の水晶体を手術によって取り除くことです。これは、全身麻酔下で眼球の角膜に切開を加え、特殊な器械(白内障超音波乳化吸引装置)を使って超音波により粉砕し水晶体を取り除く方法で行われます。次いで人工眼内レンズを挿入します。その結果、光が再び網膜上に焦点を合わせられ視力が回復します。 白内障手術の成功率は、現在おおよそ96%、言いかえれば10個の眼の内9個で術後に視力が回復します。この成功率は、全体的な白内障眼球の健康度によって決まります。眼の評価は、手術に関する危険性と利点を判断できる獣医眼科医が行う必要がある。比較的高い成功率ですが、合併症を引き起こす場合があることは無視できません。術後の合併症はいくつかあり、過剰な炎症や角膜の浮腫(にごり)、二次的な緑内障(眼圧の上昇)、網膜剥離、眼内感染、完全な失明などがあります。合併症によっては、かなり長い期間の治療や追加の手術が必要になることがあります。白内障の手術による併発症の発生率は、白内障の初期に手術することで低くなります。いっぽう猫の手術による予後は、犬より良好といわれております。 院長は「白内障と水晶体原性ぶどう膜炎のアメリカン・コッカー・スパニエルに対する超音波乳化吸引術治療」の論文を学会誌に掲載されております。また、本発表にて日本小動物獣医学会(近畿)にて優秀賞を受賞しました。 術後の処置と予定基本的に、動物は手術日の2日前に入院していただきます。術後経過をみるために5~7日間の入院が必要です。その後退院していただきますが、運動制限と、かゆみを伴うので目を保護するために2週間ほどエリザベス・カラーをつけ、目薬と内服薬の投与が必要です。投薬は、術後の1~2週間は日に数回(4~5回)数種類の点眼薬が必要です。術後の回復にもよりますが、治療1ヶ月後にはほとんどの投薬を終了できます。退院後7日、2週間、1ヶ月に眼の評価が必要です。 白内障手術の費用手術費用は、1眼あたり20~25万円前後が目安となります。これには入院料、手術料、麻酔料、入院中の検査料などが含まれます。動物の状態により検査項目や手術難易度などが異なりますので、上記料金はあくまで目安としてご理解ください。また合併症など他の疾病の治療が発生した場合も料金が変動することがありますので、ご了承のほどお願いします。この費用には、術前の各種検査費用は含まれておりません。 ご紹介していただく先生へのお願いご紹介していただく先生には、目の全体的な健康状態を適切に維持していただきたく、白内障の治療の成功に影響いたします。かかりつけの先生には早期に白内障を見つけていただくことにより最良の結果が期待できます。全ての症例に手術が必要となるわけではありませんが、白内障により障害された犬の視覚が多くの場合回復します。 |